輝け関西!〜 ”お国自慢”もういらない
産経新聞(1997年10/6)

自分の県だけの情報を発信していればいいというものではなく、もっと大きな視点からの情報発信を目指す。

〜兵庫県が情報発信・収集のために民間とタイアップして東京駅近くに開設している交流団体「ひょうご倶楽部・東京」。そこで開かれるシンポジウムなどを企画しているコミュニケーション・ビューローの代表を務めているのが宮内淑子さんだ。宮内さんに関西の情報発信のあり方について聞いた〜

━ 『ひょうご倶楽部・東京』はお役所的な雰囲気を感じさせませんね。

「普通、県の東京事務所というと入り口に名産品などがおいてあり、いかにもお役所の出張所という感じ。お国自慢的なものは今のように社会が成熟したらもういらないんじゃないでしょうか。だから、おしゃれなものにしました。『ひょうご倶楽部・東京』は平成4年にできた会員制の交流団体で、会員は1200人くらい。対談やセミナーを開いています。」

━ 県の出張所というよりサロンのようです。

「よくあるタイプの県の事務所でも数字が並んだデータは得られるかもしれないが、人が求めている情報は数字の羅列ではなくて、人間関係の中から生まれてくるもの。だから、お茶や場合によってはお酒を飲みながら情報交換ができるサロンのようなものにしたいと思ったのです。」

━ ひょうご倶楽部のセミナーは環境問題など地球的広がりを持っています。

「兵庫県に関係する施設だから兵庫県の問題を考えるというのでは視野が狭い。もっと大きな視点から世界を見て、時代の流れをとらえ、その中で自分の役割をみつめる。そのためには、自分の県の情報だけを発信していればいいというものではないと思うんです。」

━ 東京にいて関西を見ると。

「ドイツでは都市と都市を太い情報網で結ぶ『ボリコム構想』が進んでいると聞きます。『ポリ』は古代キリシャの都市、ポリス。『コム』はコミュニケーションの略です。関東は東京の一極集中で、都市間を結ぶ必要性を感じませんが、関西は特色のある都市が比較的狭い範囲にちらばっているのでこういう構想には最適ではないでしょうか。」
「また情報を発信するときはお国自慢ではなく、どうしたら互いによくなるかを考えなければ。すべて循環して相乗効果が出るもの。関西の情報を発信し、関西だけがよければいいという考えでは発展性がないし、尊敬もされないでしょう。」

━ 関西全体の情報が集まる「場」が東京にあればおもしろいかもしれない。

「広域で連携して東京にサロンをつくれば、確かに効果が期待できるのでは。東京には国内だけでなく外国からも大勢の人が来るし、その中には関西で仕事を始めたいと思って人も多い。でも何処に言って情報を集めたらいいのかわからないのが現状なのです」

━ 大阪は今、2008年夏季五輪の国内候補地になったことで盛り上がっていますが。

「オリンピックのような大きなイベントを大阪だけで独り占めにしてしまうのはもったいない。私は『阪神オリンピック』という形で世界に向けて提案されるのを期待していたんですけど・・・」
「でも、もし大阪でオリンピックが開かれたら、関西にたくさんの人がやってくるわけだから、その人達に神戸や阪神間が阪神大震災から復興した姿を見てもらいたい。アジア太平洋経済協力会議(APEC)のときにプレス・ツアーをするなどして関西を世界に紹介したように、世界からきた選手や観客の人達に、震災から復興し新たな労災都市に生まれ変わった姿を見せるツアーをぜひ企画してほしい」
「例えば、神戸市灘区の東部新都心に予定されている、生命の尊さなどについて考える知的なテーマパーク『ヘルスケアパーク(仮称)』や、災害緊急医療システムの中核施設『災害医療センター』、さらに西宮に建設が予定されている『芸術文化センター』などを回り、震災から復興した関西の姿を世界中の人に見てもらいたい。それが大阪オリンピックにおおきな価値を加えると思うんですよ。」